デザイナーダイアリー vol.01
初めまして、デザインオフィスCLIPスタッフの吉田と申します。今回エッセンシャル創刊に伴い、コラム掲載の機会をいただきました。とはいえ、僕自身文章を書くのは苦手なタイプで、学生時代の読書感想文や国語の作文ではとっても苦労したのを今でも覚えています(笑)初めのうちは読みにくいかもしれませんが、どうぞ温かい目でみてやってください。
デザインについて考えてみた。僕が所属しているCLIPでは伝わるデザインをテーマに活動します。「デザイン」って聞くと”表現されたアート的な物”を思い浮かべる人は多いのではないでしょうか。僕も最近までそう思っていました。自分の生活には程遠い分野で何かお洒落な人がセンスを用いて作った物を、人々が眺めている。でも実際は結構身近な物なんじゃないかなって思います。例えば料理人の方はお客様に料理の魅力を一皿で表現します。色とりどりな食材で視覚を、香辛料で嗅覚を用いて伝えます。鉄板焼きなどのライブ感のあるお店では実際に目の前で自分の料理を作ってくれるので、お肉の焼ける音は食べる前から聴覚を刺激して食欲をそそります。そして料理を口にして味覚、そしゃくする時の食感で触覚と、五感全てを使ってお客様に料理を伝えています。う〜ん、なんだか書いててお腹空いてきました(笑)そう思うと料理人って食材をデザインする”デザイナー”なんだと思います。映画の役者さん、出勤時に聞くラジオ番組も、名前が違うだけで、世の中はデザイナーに溢れているなって感じた瞬間、彼らから学ぶことも多いんだと思いました。
伝えるについて考えてみた。僕たちは1日の中で”伝える”という行動をどれだけしているだろうか。例えば仕事なんかでも上司に進捗状況を伝えたり、仕事が終わったら身近な相手にSNSで週末の予定を聞いたり、伝えると言うのは言わばコミュニケーションであり、当然僕たちは毎日なにかしらを伝えている。生まれたての赤ん坊でさえ言葉が喋れなくても生まれた瞬間鳴き声で自分の状態を周囲に伝えている。生物として生まれた時から僕らは伝えることを無意識にしてきたことになる。生物と言ったが、僕ら人間が他の動物と大きく違うのは、伝える媒体がたくさんあると言う点だと思う。言葉を発するのは同然だが、紀元前3200年前から文字が発明され、昔の人々は後世に当時の出来事を伝えることができた。絵画からは当時の風景や人々の暮らしを、五線譜に書かれた音楽からは感情が伝わってくる。今ではSNSが普及して、より高度な次元で手軽に広範囲に僕たちは伝えることができるようになった。伝えるハードルが下がった分、人々の幸福度が上がったかと思うとそうでもない気がする。便利なツールを手に入れたのにも関わらず、意思の疎通がうまくいかず別れる恋人達もいれば、社会に馴染めず気を病む人もいるくらいだ。伝えることが便利になった分、難しくもなったんだと思う。料理に例えてみよう。今ではサラダにドレッシングを当たり前のようにかけるが、そもそもドレッシングがなかった時代は野菜をそのまま食べていたことになる。調味料の出現で料理の幅はグッと広がったが、味の構成はより複雑になった。美味しくするための調味料だが、使い方やバランスを間違えれば、当然だが不味くなるわけだ。同じことが伝えるハードルが下がった現代にも言える。伝えることがより簡単になったからこそ、改めて僕たちは慎重に考えて行かなければならないと思う。
CLIPのメンバーとしてなにをしていくか…。デザインと伝えることの僕としての解釈はざっくり話した。初めにも話したが僕が所属するCLIPでは、伝わるデザインをテーマに活動している。伝えることが便利になった今だからこそ伝えたい事を伝えたい人たちに全て伝わるように一生懸命考えていきたい。かくいう僕はデザインがめちゃめちゃ得意と言うわけでもなく、新進気鋭のデザインスキルを持ち合わせているわけでもない。それでも伝えるハードルは昔より下がった。それだけで十分頑張れる。