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ハイブランドに学ぶデザインの美学

今年に入って、昨年財布を使う事をやめたばかりなのに、新しくすることにした。いつも思い立ったかのように、色々と身の回りを整理することがあるけど、そろそろ辞めたいと内心思っている。ただ決まって、明日は大事な仕事というタイミングで、なぜか整理整頓したくなる。例えば、テスト前の勉強が嫌すぎて、机の上を整理し始める中学生みたい。毎回何かを整理整頓したあと、気分的にはスッキリしているのに虚無感が残るのは何も進んでいないからかもしれない。話を戻すと、昨年会社を興した時に、身の周りを整理した。これから何を得てもいいように、スペースを確保しなきゃと思ったのだろうか。実際はそんなうまくいくこともなく、結果はバタバタ。



予定は未定という言葉がピッタリなくらい忙殺されている。こんなタイミングで思い立ったかのように整理を始めたわけだが、何を思ったのか、財布を使わなくなった。もちろん、電子マネーの普及とかカードばかりで、現金を使う機会が本当に減ったのもあるが、それ以上に、自社名がクリップということあり、マネークリップが気になっていたのが本音だ。マネークリップなんて使った事もないし、現金を見せびらかしているようで気が引けたのだが、使用レビューを見れば見るほどかっこよく気に入ってしまった。最近はミニマリスト思考に拍車がかかったかように、ものを買う時に必要かどうかを調べないと不安になる。飲食店とか訪れる場所なんかは下調べなしの偶然が面白かったりするけど、こと自分の持ち物となれば話は別。後悔したくない気持ちが強いのか、なかなか即決ができないことが多い。洋服なんかも、自分が悩んで買った洋服が翌週セールでかなり割引されているのを見ると、せっかくのお気に入りだった商品もなぜか嫌になってしまう。おそらくは値段で見ている自分がいたのだろう。だが、それではダメだと思い、価格を意識しないようにした。そうすると一番高いものがよく見えてくる。人って不思議だ。



そこから急ピッチでハイブランドの背景を調べてみた。すると、なぜ高いのか、なぜこの価格設定なのか、だんだんと商品だけでは見えてこない部分を知ることができた。ハイブランドの美学というべきか、当然一言で表現できることではないが、確かに商品に対する物語の作り込みには驚いた。シャネルはどうして生まれたのか、エルメスは何に拘っているのか、どうして高所得者が憧れるのか、これらの意味をそれまで知ることはなかった。この出来事がきっかけとなりデザイナーから会社を経営する立場へと変わり、見えていなかったことに目を向けるようになったのだろう。バイブランドの美学は歴史があってこそと言えそうだけど、私自身も自社も同じように語れるようになりたいと思った。




長い前置きになったが、マネークリップを買った。しかしリサーチをしたにもかかわらず、どうしても現金がいる場面が急に増えてきた。小銭を使う場面が増えたのだ。そこで探したのが、コインケース。ミニマリストを目指しているのに、身の回りにもの増えるという本末転倒になってしまいそうになったので、コインケースは買わなかった。2021年が明けて、たまたまセールでオンラインサイトをみていた時に発見したのが、マルタンマルジェラのマネークリップに小銭がちょっとだけ入る財布だ。いまだに財布ではなくマネークリップと言い張っているが、やっぱり財布だ。もちろん最後の決め手は機能性だが、マルジェラが候補になったのは、プロダクト制作にかける熱意だ。映画をみて感銘を受けた影響もあるが、神は細部に宿るという言葉を信じて、自分たちが作るデザインにも、想いを込めたいと思う。


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