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追及好奇心

「川本」 まずは自己紹介をお願いします。

「佐藤」はい。広島県出身25歳の佐藤竜也です。今年の5月まで働いていた会計事務所を退職しました。現在は“人生を変えるチケット”をコンセプトに、D2C手帳ブランドuseless(ユースレス)の創業に従事しています。




「川本」 広島出身ということですが、いつまで地元で過ごされたのでしょうか。

「佐藤」大学生まで広島で過ごしました。就職をきっかけに大阪へ引っ越しをしました。それまでずっと地元で過ごしたこともあり、少し勇気のいる決断でしたね。でも、結果的には地元を離れたことで見えたことも多く、非常に学びのある決断だったと思っています。




「川本」 地元の広島で就職するという選択肢はなかったのでしょうか。

「佐藤」最初は広島での就職も考えました。最初はやりたいことを聞かれても中々答えることができず、勉強して税理士もしくは大手企業への就職を漠然と考えていました。そこで20社ほど県内の税理士事務所へ電話すると、2社だけ話を聞いてくれました。実はこの経験が大きなきっかけとなり、自分は何がしたいのかを真剣に向き合うことができ、気づけば“テクノロジーで社会を変革できる会社”というのが1つのキーワードとなりました。最先端の環境を追い求めることで徐々に就職活動の場所は東京や大阪と大都市が中心となりました。この就職活動では優秀な学生、世の中を良くしたいと躍起になっているベンチャー企業に触れた経験は、刺激的な毎日でした。結果的には大阪にあるITを活用した税務サポートを行っている事務所へ就職する形となりました。不安がないと言えば嘘になりますが、同時に将来の自分へのワクワクの方が強かったかもしれません。




「川本」素晴らしい行動力と、勇気ある決断がすごいですね。これから就職活動していく学生の皆さんには、ぜひ参考にして欲しいですね。ここからは就職した会計事務所でのお話を聞かせいただけますか。まずは、どのような業務をご担当されたのでしょうか。

「佐藤」最初の1年目は先輩のサポートで資料作成が主な業務でした。資料を作ることで財務分析の実務に携われたことは、非常に大きな勉強にも繋がっています。2年目でようやく担当のお客様を対応するようになりました。合計で20社ほど対応したと思います。私たちは実際に経営者の方々つまりは社長とお話をする機会も多く、経営者がどんなことを考えているのか、毎日が勉強でした。3年目では出来ることも増えていく反面で、1人では解決できない課題も多く、試行錯誤の連続だったのを覚えています。結果的には、3年で50社ほど、財務管理のサポートや経営の課題解決に従事してきました。




「川本」年数を重ねることで見えてくることも多くなる反面で、まさに仕事の難しさに直面するタイミングでもありますね。この3年目あたりから転職を考えるきっかけになっているのでしょうか。

「佐藤」これがきっかけというのは無いですが、悩み始めたのは確かに3年目になるにつれです。もともと就職時に、いつかは起業もしたいと想像はしていました。就職活動時のワクワクは、そこにもありました。ちょうど悩み始めのタイミングで、再度自分は何がしたいのか?を問いかける時間が増えていきました。そこで知り合ったメンターの方との出会いをきっかけに、起業の意識が本格的に芽生えました。1人で自己分析ノートを書いたりすることで、頭の中をクリアにする時間は今も続いています。



「川本」この時期からノートを活用した自己分析と今後展開予定の手帳にも繋がっているんですね。苦労から起業のきっかけまで教えていただきありがとうございます。ここでuseless(ユースレス)の話になりますが、ノート・手帳ブランドの創業に至った経緯をお聞かせください。

「佐藤」一番の理由は“手帳で成長を感じ、手帳で悩んだ”という原体験が大きなきっかけとなっています。それともう1つは、共同で創業することとなる田中の存在が大きいですね。バイト先で知り合った2つ下の後輩なんですが、田中が就職活動で来阪する際に、呑みに行くなどの関係でした。社会人2年目で少しずつ悩みができた頃の自分には、いつか自分のブランドを作りたいと話す田中の熱量に惹かれました。ある日唐突に田中からの“今、思ってる課題ありますか?”という急なブレストに、手帳がしっくりきてないという答えをきっかけに、結果的には手帳・ノートブランドの創業に辿り着きました。




「川本」一緒に苦楽を共にする仲間の存在は大きいですね。ひとつひとつの出会いも大切ですね。田中さんとの意気投合から、創業までの流れをお聞かせください。

「佐藤」実際に起業を決意してから退職まで約1年ほどありました。2020年の1月ごろにメンターと出会い、退職を伝えたのは12月でした。そこから実際の退職は今年の5月でした。相談したら気持ちの整理がつかなくなる気がしたので、特に会社の人たちに相談はしていません。その間は、田中と2人でアイデアを出しては失敗と試行錯誤の連続でした。主に4つほどアイデアがあったのですが、中々うまく行かない物が多く、結果的に手帳ブランドに落ち着きました。そこからは手帳ブランドであるuselessの立ち上げに全力でした。拠点は福岡にすることにしたのですが、物件を探したりあとは、実際にノート作りに従事したりと、毎日がやることでいっぱいでしたね。現在は、サイト制作や認知拡大に向けての活動中ですね。




「川本」立ち上げ時はやることが多くて大変ですよね。ひとつずつ課題解決が大事ですよね。色々な試行錯誤があったとのことですが、差し支えなければ、失敗だったアイディアのひとつをお伺いできますか。

「佐藤」全然大丈夫ですよ。かなりいいところまで進んでいたのが1つあります。それは相談プラットフォームで、簡単に言えば知恵袋の進化版を想像していただけると分かりやすいです。でも試験的な運用も行ったのですが、実際に使う人とのマッチングや、マネタイズの方法まで持っていけなかったのが失敗の最大の原因ですね。




「川本」なるほど。話だけを聞いていると面白そうな企画ですが、中々うまく行かないものですね。教えていただきありがとうございます。useless(ユースレス)の拠点が福岡ということですが、それはどんな理由からですか。

「佐藤」福岡を拠点にした大きな理由は、税制面での優遇です。政令指定都市とされていて、スタートアップ企業への支援が手厚いなど、起業する人の背中を押してくれる点が大きな決め手でした。これは前職で学んだ大きなポイントですね。そのほかには、立地もいいですし、スマートシティを目指すなど、これからもっと発展していく街だと感じた点も決めた理由のひとつでした。就職で広島を離れて大阪に来たことで、場所へのこだわりも少なくなりました。そういう意味でも、起業に向けて最もメリットの強い場所を選択した形ですね。人が集まって、もっと発展して欲しいですね。




「川本」確かに高島市長も経済誌でお見かけするなど、幅広い活躍をされいますよね。これからもっと発展していく感じは、非常に共感します。働き方も多様化していますし、場所にこだわるよりメリットで選ぶ方法は最良ですね。ここからは創業に向けての苦労をお伺いさせてください。

「佐藤」一番の苦労は、コロナ禍で予想以上の制限がかかったことです。現在uselessのメインプロダクトはノートです。このノートにはいくつもこだわりが詰まっているのですが、紙質と製法ですね。自分たちが気に入った紙質と独自の製法で作っている工場が東京にあるのですが、中々コロナ禍で気軽に訪問できる状況ではありませんでした。なんとか許可をいただき、結果2度訪問させていただいたのですが、直接お会いすることで自分の熱量を伝えられた気がしました。オンラインへの切り替えが囁かれる中で、その反面にリアルの価値はより一層高まっていくような気もしました。これが苦労でもあり、気づきでもありましたね。




「川本」確かにそうですね。今や様々な場面でのDXが急務だと言われていますが、リアルとのハイブリットが必要ですよね。この1年半で世界中の多くの方々が、人との距離感に敏感になりましたよね。
「佐藤」まさに人との距離感には疲れますね。現在進行形で大変です。アナログかもしれませんが、ここだけの話、費用も相場の5倍以上かかったりする分、直接お会いできたことには感謝ですね。2次元の情報には限界があると、学びある時間でもありました。
「川本」uselessの第一弾プロダクトがノートということですが、デジタルが主流な今の時代には逆行しているように感じます。何か意図があってのことでしょうか。

「佐藤」確かに今の時代には逆行しているように思うかもしれませんが、だからこそです。私たちがターゲットにしているお客様は、20代後半から30代後半あたりの方々です。世間でいうミレニアム世代です。学生や若い方々をターゲットにしていないわけではありませんが、価格設定が1冊3000円とノートの相場と比較しても高額です。なかなか手が出せる価格ではありません。しかし、ターゲットとしている方々は、デジタルも使いこなしているものの、実際に物を書くことの必要性もどこか感じてる方が多いと考えています。大事なことを書き留める習慣のひとつに、私たちのノートをぜひ使って欲しいと考えています。




「川本」確かにその価格は強気な設定ですが、先ほどのこだわりを考えればそれだけの価値がありそうですよね。商品の完成が楽しみです。しかし、既に手帳やノートの有名な人気ブランドはたくさんあります。どこで差別化を考えているのでしょうか。

「佐藤」私たちのノートに対するこだわりは、先ほどの紙や製法はもちろんですが、それだけでは勝てないこともわかっています。だからこそ、重要なのは、特別な付加価値だと考えています。それは機能より体験を売りたいということです。名前にもなっているuselessとは無駄という意味です。せっかちになりがちな現代において、ゆっくりノートに書き込む時間を作る必要性を説いていきます。だからこそ、コンセプトは人生の余白時間をデザインするとしています。つまり、ノートを売っているだけでなく、自分を知る空間を提供していくことで、差別化を考えています。




「川本」uselessにはそんな意味が込められているんですね。素敵です。ノートで自分と向き合う時間の必要性は、まさにターゲット層には必要な時間のように思います。私も購入した際には、是非ともじっくり自分と向き合いたいと思います。

「佐藤」なんでも手軽に手に入る時代だからこそ、電子機器との向き合い方は非常に大切です。情報量だけで言えば20代で既に50代くらいの価値観を持っている方も多いですが、経験値では勝てません。SNSでのトラブルが横行しているのも、危険ですね。一度デジタルデトックスという意味でも、アナログでの価値を再認識していただけると幸いです。




「川本」uselessに対する思い、たくさん聞かせていただきありがとうございます。インタビューも終盤となりました。佐藤さんは今年で25歳とのことですが、今の大学生、特に就活をしている人たちへ何かメッセージをいただけないでしょうか。

「佐藤」これは私の実体験なのですが、行動する前に自分を知ることに時間をかけて欲しいと考えています。僕はずっと行動することが一番大事なことだと思ってきました。しかし、自身の就職活動を通して学んだことは、自分を知ることの大切さでした。人はよく、やりたいことをやる人、いわゆるToDoタイプ型の人と、幸せになりたいと願うToBe型に分けられると言われています。ToDoタイプの方は俗におうアーティストタイプです。ここで注意が必要なのは、ほとんどの人はToBe型のタイプなのに気づけばToDoタイプ、やりたいことをやる人に憧れを持っています。それでは一生マッチしません。これが注意しなければいけません。今の自分が好きかもしれない?そう気づくこともとっても大切です。そのためには、自分と向き合う時間が必要です。行動ばかりに意識が行っていると、本当に大切なことを見失いがちです。そこを理解して欲しいですね。




「川本」就職活動で自分と向き合ってきた佐藤さんならではのお言葉ですね。今まさに焦っている方にこそ、聞いてほしいお言葉です。最後の質問となりますが、この雑誌のタイトルになっている、エッセンシャルに因んで、佐藤さんにとって、人生に欠かせないことを教えてください。

「佐藤」それは「追及好奇心」です。こんな言葉は実際になく、自分で作った造語なのですが、簡単に言えば、常に何かに興味を持って追及していく好奇心が、人生には欠かせないと考えています。まだ短いですが幼少期から人生を振り返ってみても、人との繋がりをすごく大事にしてきました。それも紐解けば、人に興味を持ち、もっと知りたいと思う好奇心がそうしていたと思います。これから起業していく中で第一弾プロジェクトがノートですが、それで終わりではありません。第二弾、第三弾と皆さんにより良いプロダクトを提供していきたいと考えています。これもまさに、色々なことへの追求と自分の中の好奇心がそうさせていると思います。自分と向き合って自分を知った後には、行動あるのみです。好奇心を絶やすことなく、これから精一杯頑張りたいと思います。

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